一般治療
一般治療
虫歯は、歯に溜まった歯垢(プラーク)の中にいる虫歯菌(ミュータンス菌)が糖(甘い食べ物)をえさにした時に出す酸によって歯が溶かされ穴が開き、歯の内部に感染していく病気です。虫歯の初期段階であれば適切な歯磨きで改善できる場合もありますが、象牙質や神経まで虫歯が進行すると、歯がしみたり痛みを感じたりします。こうした場合は虫歯を取り除いたうえで詰め物や被せ物といった人工物でカバーするほか、神経を取り除くこともあります。重篤なケースでは、抜歯して人工歯を入れる必要があります。予防するためには、甘い飲み物などを控えたり、歯垢がたまらないよう丁寧に歯磨きしたりすることが大切です。
虫歯の進行と治療
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歯垢(プラーク)の形成
虫歯菌が歯にくっつき、歯垢を形成します。歯垢は粘着性が強く、うがいをしただけでは落ちません。しっかり歯磨きをしてこすり取りましょう。
磨き残しやすい部位
- 歯と歯の間
- 奥歯の溝
- 歯と歯肉の境目
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C1:極めて初期の虫歯、白濁
歯の表面のエナメル質にうっすらできた虫歯です。白濁といって白っぽくなることがあります。極めて初期の場合には歯磨きを行なうことで、再石灰化して改善することもあります。削らずに経過を見ます。
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C2:初期の虫歯、エナメル質内の虫歯
歯の表層のエナメル質にできる虫歯で、ほとんど症状がありません。虫歯の部分を最小限に削って、コンポジットレジンという白い樹脂を詰めて即日で治す場合が多いです。コンポジットレジン修復は、できる限り健康な歯を削らずに修復する方法です(MIミニマムインターベーション治療)。
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C3:中期の虫歯、象牙質内の虫歯
エナメル質の内部の象牙質まで感染した状態で、冷たいものがしみます。また、歯髄と呼ばれる歯の神経に近づいてくると、温かいものや甘いものがしみるという症状が出てきます。レジンによる治療、もしくは歯の型取りをしてインレーと呼ばれる詰め物を作製します。
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C4:後期の虫歯、歯髄炎(歯の神経の炎症)
象牙質から歯髄と呼ばれる歯の内部の神経に虫歯菌が感染した状態です。何もしていない状態でもズキズキ拍動するような痛みがあり、その痛みは顎から頭の方まで広範囲に感じることがあります。
痛み止めのお薬を飲まないと我慢できないような状態になり、さらにひどい場合には食事や睡眠が困難になります。麻酔をしっかりして、根管治療によって歯髄(神経)の感染した部分を取り除きます。いわゆる「歯の神経を取る」と表現される治療がこれに当たります。治療は数回かかり、症状がなくなって歯の根っこに最終的なお薬を詰めるところまでできたら、歯の頭の部分を作製していきます。通常は土台を作製して被せ物(クラウン)をすることが多いですが、歯の頭が多く残っている場合には、穴の部分だけを詰めて終えることもあります。 -
根尖性歯周炎
歯の内部の神経の部分や歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝)を通して、歯の根っこの先に細菌が感染した状態です。根管治療を行ない、消毒をします。改善がない場合や歯根破折(歯の根っこが割れてしまうこと)が起きた場合には、抜歯しなければならないこともあります。
根管治療
虫歯が進行し、歯の内部の神経(歯髄)のあるところまで達すると、冷たいものや温かいものがしみるほか、何もしていなくてもズキズキと強い痛みを感じるようになります。重度の場合には睡眠が困難になることもあります。そうした場合は、虫歯部分を取り除いて苦痛を軽減するために、麻酔をかけて感染した歯髄を取り除きます。これを根管治療といいます。
根管治療は一度では完了できません。何度か通院していただき、歯髄に細菌を残さないよう丁寧に治療します。最終的には薬を詰めて被せ物をします。歯髄を取ると痛みはなくなりますが、歯が変色しやすくなる、歯が折れやすくなるなどの影響があります。
歯周病とは
歯周病とは、お口の中の細菌が歯と歯肉の間の溝に停滞して感染することで炎症を起こす疾患です。
歯と歯肉の間の溝が深くなったものを「歯周ポケット」と呼び、歯周病が進行するにつれ、このポケットが深くなり歯肉の中の顎の骨を溶かします。最終的には歯がグラグラして抜けてしまいます。
サイレントディジーズ(Silent Disease)と呼ばれ、症状を感じることがなく静かに進行することもある慢性的な恐ろしい病気です。自然に改善することはありませんので、放置せずに歯科医院で治療を行なう必要があります。放置した場合には歯がグラグラして抜け落ちてしまうこともあるほか、歯が動いて噛み合わせが崩壊することもあります。さらに心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病などの全身疾患とも関与していることが明らかになっています。歯周病の悪化によってこのような全身疾患を引き起こすこともありますので、注意が必要です。歯周病は生活習慣やストレス、免疫力とも密接な関係があり、生活習慣病とも呼ばれます。
全身疾患との関連
1.糖尿病
歯周病との関連でもっとも知られているのが糖尿病です。
歯周病は糖尿病の合併症といわれ、相互的に悪影響を及ぼすことがありますし、歯周病の治療によって糖尿病が改善することもあります。お口の中の細菌は歯肉の血管から全身へと入り込み、細菌の出す内毒素によってTNF-αの産生を引き起こします。TNF-αはインスリンの働きを阻害するため、糖尿病が悪化することがわかってきました。
2.誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は高齢者に多く、食べ物や異物を食道ではなく気管に飲み込み、肺炎を発症する病気です。通常はむせて咳がることで吐き出すようになっていますが、これらの機能が衰えると口の中の細菌と一緒に飲み込んでしまい、肺炎を起こします。場合によっては死亡することもあります。歯周病の予防で誤って気管に入る細菌を少なくし、誤嚥性肺炎になりにくくします。
3.心筋梗塞
心筋梗塞とは心臓の冠動脈と呼ばれる血管が詰まり、心臓を動かす心筋に血液が行き渡らなくなることから心筋が壊死を起こします。症状が重い場合には死亡することもあります。歯周病の細菌の影響により血管内の沈着物が剥がれ、血管を塞いでしまうことがあります。
4.脳梗塞
心筋梗塞と同様、脳の血管が詰まって起こる病気です。歯周病の人は正常の人に比べ2.8倍脳梗塞になりやすいという報告があります。
5.骨粗鬆症
骨粗鬆症とは骨の量が減少、または弱くなることで骨折しやすくなる病気です。
日本には1,000万人を超える数の患者さまがいて、高齢な人ほどかかりやすくなります。特に閉経後の女性に多く、女性ホルモンの分泌低下が関与している可能性が考えられます。歯を支えている顎の骨も弱くなりますので、歯周病が悪化しやすくなります。また、骨粗鬆症の治療薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤を服用した状態で抜歯などをすると、顎の骨が壊死することもあるので注意が必要です。
原因
お口の中には約400種類の細菌が存在しています。その中に歯周病を引き起こす細菌がいます。
主な歯周病細菌
- アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A.A菌)
- プロフィロモナス・ジンジバリス(P.G菌)
- プレボテーラ・インテルメディア(P.I菌)
- スピロヘータ
歯垢(プラーク)と呼ばれる白、または黄ばんだ粘着性の沈着物が歯に付着して、虫歯や歯周病を引き起こします。
歯垢の中には多くの細菌が住んでおり、わずか1mgの中に2億以上の細菌が存在しているといわれます。強い粘着性のため、うがいをしただけでは歯垢を除去することはできません。バイオフィルムと呼ばれるバリアーのために薬剤を通さず、歯磨きなどでしっかり機械的に剥がさなければ除去が難しいという特徴があります。
歯垢を取り除かず放置しておくと、歯垢が歯石という硬い状態になり、歯にくっついて表面がザラザラになります。こうなると歯ブラシでこすっても除去が難しくなり、歯科医院におけるプロフェッショナルなクリーニングが必要になります。歯垢同様に歯石の中にも多くの細菌が住み着いて毒素を出し、歯周病を進行させています。
歯周病の主な原因、悪化させる因子
- 歯垢および歯石
- 不適合な詰め物や被せ物、義歯
- 不規則な生活習慣
- 喫煙
- 不正咬合、ガタガタな歯並び、噛み合わせの影響
- 歯ぎしり、くいしばり(咬合性外傷)
- ストレス
- 全身疾患(糖尿病、骨粗鬆症、ホルモンバランス)
- 薬の長期服用
- 口の中の乾燥(唾液分泌量が少ない)、口がいつも開いている(出っ歯など)
近年ではスマートフォンやパソコンの普及により、人は常に下を見た姿勢でいることが多くなりました。この姿勢を長時間続けると唾液の分泌量が下がるため、こうした生活習慣が口臭や歯周病の原因のひとつと考えられるようになってきました。対策としては、スマートフォンやパソコンの使用時間を制限するか、もしくは姿勢に気をつけるという方法があります。このほか、5分おきに首を回したり、顎の付近をマッサージする、ガムを噛むなどして唾液が出るようにすることも大切です。
歯周病の進行
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健康な歯肉の状態
- 歯肉が引き締まっている
- 薄くてきれいなピンク色の歯肉
- 歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)が生理的な範囲内である
- 歯磨きのときに出血しない
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軽度の歯肉炎
- 歯肉が炎症を起こし、ブヨブヨしている
- 色が濃く赤い歯肉
- 歯周ポケットがやや深くなる
- 歯磨きをすると出血する
- 歯垢や歯石が溜まっている
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中度の歯周病
- 歯肉の色が赤黒い箇所も出てくる
- 歯周ポケットが深い
- 歯周ポケット内部に歯垢や歯石が溜まってくる
- 容易に出血する
- 歯肉に違和感を覚える
- 口臭がある
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重度の歯周病
- 歯肉の色が赤黒い
- 歯周ポケットがかなり深い
- 歯周ポケット内部に歯垢や歯石が多量に蓄積している
- 容易に出血する
- 歯肉がむずがゆい
- 口臭が強い
- 歯肉が下がり、歯の根っこが見えている
- 顎の骨が溶かされ、歯がかなり揺れる
歯周病の検査
口の中の状態を視診、触診して、口内の写真を撮ります。
歯肉の状態や歯周ポケットの深さ、出血の有無、歯垢・歯石の沈着具合いを調べます。
噛み合わせや歯並び、適合の悪い詰め物・被せ物の有無を調べます。
レントゲン検査にて顎の骨や歯肉内部の状態を調べます。
必要があればCTを使用し、顎の骨の状態を三次元的に調べます。
歯周病の治療
1.歯周基本治療
a) ブラッシング指導
まずは歯の表面の歯垢や歯石の沈着部位を患者さまに知ってもらい、歯磨きの効果的な方法、フロスや歯間ブラシなどの補助的清掃用具の使用法などを説明して、歯磨き指導を行ないます。
歯磨き指導の際に、歯垢の染め出しなどによって視覚的に見える状態にすることもあります。ピンクや青色に染まった歯垢がどのくらい歯ブラシでこすらないと取れないかが体感できると思います。歯垢は非常に強く粘着するため、軽く数回こすっただけでは取れません。ブラシの毛先を的確に当てて細かくこすることが重要です。できれば20回程度動かすのが理想的です。強く大きくこすりすぎると、歯がすり減ってしまったり、歯肉を傷めたりします。
歯ブラシは鉛筆持ちにして、優しく磨きます。縦方向、横方向、さらには円を描くように細かく20回程度磨きましょう。とくにしっかり磨かなければいけないのは、歯と歯肉の境目、溝、さらに歯と歯の間、奥歯の周囲などの歯垢がたまりやすい箇所です。歯と歯の間の清掃は歯間ブラシを用いるのが良いでしょう。歯周病が進行していて歯周ポケットが深い場合には、毛先が細く歯周ポケットに入りやすい歯ブラシを使用しても良いと思います。毛の硬さは普通が基本ですが、力がどうしても強くなりやすい場合には軟らかめを使用してください。
歯磨きのタイミングは、毎食後に磨く習慣をつけましょう。もっとも大事なのは就寝前の歯磨きです。鏡を見ながら丁寧に磨いてください。歯肉の血行を良くするために、指や専用のツールで歯肉をマッサージすることも有効になるでしょう。
ブラッシングの要点
- 歯ブラシを鉛筆(ペン)持ちにする
- 歯と歯肉の境目を磨く。歯間ブラシを使い歯と歯の間を磨く
- 細かく優しく20回程度擦る
- 毎食後磨く
- 夜寝る前に5分以上かけて重点的に磨く
b) スケーリング、ルートプレーニング
歯科医院で特殊な器具を使って歯垢、歯石の除去を行ない、歯の表面を滑沢できれいな状態にします。この治療を「スケーリング」といいます。手でカリカリと細かく取り除いていくハンドスケーラーと呼ばれる器具を用いたり、水を出しながら超音波の振動で取り除く超音波スケーラーを用いたりすることが多いです。歯肉の内部に埋まっている歯石を取る場合には痛みを伴うこともあるので、必要な場合は麻酔をします。
また、歯垢や歯石を取り除くだけではなく、歯の表面または歯の根っこの表面を滑沢にすることを「ルートプレーニング」といいます。スケーリングとルートプレーニングは同時に行ないます。
2.矯正治療、補綴治療
基本治療と並行して、歯周病の要因が歯並びや噛み合わせにある場合には歯列矯正治療を行なうことがあります。また適合が悪く、歯周病の原因となるような詰め物・被せ物がある場合には、外して作り直します。
3.歯周外科治療
歯周外科治療は、基本治療ではアプローチが難しく改善しにくい歯周病に対し、外科的に歯周ポケット内を清掃する治療です。歯周ポケットを浅くし、歯を清潔で磨きやすい環境に整えます。
歯の根っこの周りの骨が著しく減少している場合には、自家骨もしくは人工骨を入れて骨を再生させる方法もあります。また、歯肉が下がった部分にほかの部位の歯肉を移植させるような手術もあります。
4.歯周内科治療、3DS
歯周内科治療は、唾液の中の細菌などを調べ、投薬(ジスロマックなど)などで歯周病細菌を減らす方法です。また、薬剤を入れた専用のマウスピースを着用して殺菌する「3DS」という方法もあります。
5.メンテナンス
歯周病は再発しやすいのが特徴です。日々の歯磨きに加え、定期的な検診とクリーニングが重要です。一度歯周治療が終了したからといって、口腔内の細菌が全て死滅したわけではなく、歯肉や顎の骨が元に戻ったわけではありません。歯磨きや歯科医院でのクリーニングを怠ると、再発して歯周ポケットが再び深くなることがあります。3~6ヵ月ごとの定期的な検診とクリーニングをおすすめします。
顎関節症について
顎の関節が何らかの原因で痛くなったり、開かなくなったり、音が鳴ったりするような症状を顎関節症といいます。顎が思い通りに動かないと食事を思うようにとれないほか、関節の音が気になってストレスになるといった症状が現れます。
また、顎関節症は顎の不快感だけでなく、副症状として肩こりや頭痛、腕のしびれなどにも影響しているケースがあります。
このように広範囲に症状がわたるため原因もさまざまなものが考えられますが、代表的なものとしては歯の噛み合わせの不正や、緊張やストレスによって関節に過度に力が入ることなどが挙げられます。当院では聞き取りのほか、顎の動きの検査やレントゲンなどにより診断します。
- 毎日歯を磨いても虫歯になることはありますか?
- 虫歯になる要因は、口内の細菌の量、唾液の分泌量、生活習慣などさまざまです。歯磨きは虫歯予防において大切なものですが、それ以外の原因も考慮に入れながら虫歯のリスクを下げる必要があります。
また、歯磨きが隅々までできていない可能性があります。当院では歯を磨けているか検査していますので、ご相談ください。
- 歯の表面が少し変色してるだけなのですが、治療した方がよいのでしょうか。
- ごく小さな虫歯であれば、適切な予防ケアをすることで自然治癒力を高めて歯を削らずに治療できる可能性があります。歯を正しく磨けるようになるだけで、より適切なケアができるようになります。
- 神経を抜いたにもかかわらず、歯が痛みます。
- 歯の根の先で細菌が増殖し、炎症を起こしている可能性があります。
根管治療をした場合でも、管が複雑に入り組んでいるため取り残しがあるかもしれません。根管治療をした歯が再び痛くなった場合は、すぐに歯科医院にご相談ください。
- 歯周病にかかりやすい人の特徴を教えてください。
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甘い食べ物や飲み物を好む方は、糖が細菌のエサとなるため歯垢や歯石が溜まりやすい傾向にあります。また、喫煙の習慣やストレス過多、寝不足が続く場合も歯周病に影響するので、規則正しい生活を送る必要があります。
- 歯周病の具体的な治療内容はどのようなものですか?
- 歯周病は、歯の付け根などに歯垢や歯石が残ることで起こります。歯周病の治療では、歯の周囲に残っている歯垢や歯石を取り除き、歯肉を引き締めていきます。また、ホームケアを充実させるために、歯垢・歯石が溜まらない歯磨きの方法もご指導します。
- 歯石を除去するときは痛みがありますか?
- 定期的なクリーニングや軽度の歯石付着の除去であれば、痛みはほとんどありません。重い歯周病であれば麻酔をして歯石を取り除くこともあります。治療中に痛みを感じたらお知らせください。
- 顎関節症は、噛み合わせを良くしたら改善しますか?
- 顎関節症の要因にはストレスなども考えられるため、必ずしも噛み合わせを良くすれば顎関節症が改善するとは限りません。当院ではカウンセリングやレントゲン検査などでいろいろな視点から診察を進めます。噛み合わせを改善する場合も、詰め物や被せ物から調整するなど、慎重に治療します。
予防ケア
歯がしみたり、噛むと痛かったりという症状が出てから歯科医院を受診するのではなく、痛みなどを未然に防ぐための予防ケアを始めませんか?
欧米、特にスウェーデンなどの北欧の国では、国家プロジェクトと共に予防ケアを充実させています。その結果、国民の多くに予防ケアが広まり、虫歯や歯周病の割合が減少しました。今では、予防やクリーニングのために歯科医院に通院することが当たり前、という意識に変化してきたようです。
全身疾患を予防
動脈疾患
歯周病が心臓や脳の疾患の原因のひとつになっているのをご存知でしょうか?歯周病の原因菌によって狭心症や心筋梗塞、脳梗塞が引き起こされることが明らかになってきました。歯周病の予防は動脈疾患の予防につながります。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、誤って気管や肺に食べ物などが入り込んで発症する肺炎です。通常は咳などにより防止されるのですが、抵抗力などが衰えると充分に防げず、歯周病原因菌が肺に侵入しやすくなるといわれています。誤嚥性肺炎の予防にも、予防ケアが重要になってきます。
メタボリックシンドローム
歯周病と肥満に因果関係があることが明らかになってきました。予防ケアによりダイエット効果がもたらされる可能性があります。
お子さまの予防プログラム「虫歯にしない習慣を身につける」
お子さまの予防ケアは妊婦のときから
妊娠した女性が歯周病になると、早産や低体重児になる可能性が高くなることが明らかになってきました。歯周病原因菌が口の中から体内に入り、胎盤を通過して胎児に直接感染することが原因ではないかといわれています。妊婦のときから歯周病を予防することは、将来のお子さまの健康につながります。
赤ちゃんの虫歯ケア
1歳半から虫歯にかかりやすくなり、2歳半ごろからしっかりした対策が必要になります。この時期に虫歯になってしまうか虫歯を予防できたかによって、将来的な虫歯のなりやすさが決まってしまうともいわれています。お子さまが赤ちゃんのころから充分な対策をしましょう。
離乳食が始まったら、代わりに噛んであげるのは絶対にやめましょう。ご両親の口の中の細菌がお子さまに感染してしまいます。また、フーフーして冷ますときも唾液が飛ばないようにそっと息をかけましょう。お皿やスプーンなども共有せず、なるべくお口の中の細菌が感染しないように気をつけることが重要です。
しかしこの時期のスキンシップは成長のうえで重要なので、キスなどもまったくしないのではなく、過度に行なわないよう注意することが大切です。砂糖などの甘いものはなるべく避けて、果物などの自然な甘さで味覚を成長させてあげましょう。
4歳を過ぎたら予防ケアを始めましょう
4歳になると周囲の環境に少しずつ慣れてきて、治療などをある程度がんばれるようになってきます。このタイミングで定期的に検診を受け、クリーニングによる予防ケアを始めましょう。
予防的観点からみた歯列矯正、歯並びの改善は虫歯や歯周病の予防になる
歯がガタガタに並んでいると、へこんでいる部分が磨きにくく、虫歯や歯周病の細菌が繁殖しやすくなります。歯並びを良くすると唾液が隅々に流れ、清掃が容易になって虫歯や歯周病になりにくい環境になります。
また、前歯の前傾の角度が大きく、出っ歯などでお口が閉じづらい方は、前歯が乾燥しやすいため虫歯や歯周病のリスクが高まります。前歯を適正な角度にしてあげることも、歯の維持や咀しゃく機能のために重要な治療です。
このように、歯列矯正は見た目を良くするだけでなく予防ケアの役割もあり、全身の健康にも良い影響をもたらします。
プロケア
クリーニング
歯科医院で行なうクリーニングは、おもに歯に付着した歯石などの汚れを取り除きます。PMTCと呼ばれる専門的なクリーニングでは、タバコのヤニやステインなどによる表面的な着色も取り除くことができますが、歯石を取り除くことは歯周病の予防にも効果があり、審美性だけでなく健康面にも良い影響が現れます。
虫歯や歯周病の予防ケアの基本はご自宅での歯磨きではありますが、毎日完璧に磨くことは難しいものです。定期的にクリーニングを受けることで汚れをしっかり落とし、歯もツルツルにして汚れがつきにくいようにします。
ブラッシング指導
歯磨きはほとんどの人が毎日行なっているものですが、正しくできている人はなかなかいないと思います。というのも、虫歯のなりやすさや歯の並び方、顎の大きさなどの条件は人それぞれであり、その人に合った磨き方が必要にるにもかかわらず、ご自身で正しい磨き方を知る機会はなかなかないからです。
歯科医院では、患者さまのお口の中や汚れの範囲などをチェックしたうえで、その人に合った磨き方を実践的に指導します。普段磨けなかったようなところに歯ブラシが届くようになるだけで、虫歯の予防効果が高くなります。
生活習慣の改善
虫歯や歯周病などの予防は、歯磨きだけでは不充分です。どれだけ歯をしっかり磨いていても虫歯や歯周病になるケースがあります。人によってお口の中の細菌の数や歯並び、虫歯のなりやすさなどが異なり、歯磨きだけでなく生活習慣そのものを改善した方が良いこともあるのです。例えば、完食の回数が多い方は細菌の数が増える要因となりますし、ストレスが多い、睡眠不足、また喫煙の習慣なども虫歯や歯周病のリスクを高めます。当院では患者さまの生活習慣を丁寧なカウンセリングでお伺いし、生活習慣を無理なく改善するためのメニューをご提案します。
- 大人でもブラッシング指導を受けた方が良いのでしょうか?子供が受けるというのはわかるのですが……。
- お子さまはもちろん、大人の方にもぜひブラッシング指導を受けていただきたいと思います。
大人の方はお子さま以上に歯磨きの習慣が身に付いており、その大切さもわかっているのではないかと思います。毎日の習慣だからこそ、歯科医院で適切な歯磨きの方法を知って予防ケアに生かしてほしいと思います。
- いま歯が痛いとかしみるといった不快感はないのですが、検診を受けた方が良いのでしょうか。
- 予防ケアは、歯に痛みなどが出ないよう健康に保つことが目的です。自覚症状がなくても、検診で虫歯や歯周病になりかけているところが見つかることがあります。異常がない場合でも、ぜひ検診を受けていただきたいと思います
- 歯科医院でのクリーニングは、具体的にどのようなケアをするのでしょうか。
- 基本的には、歯周病予防として歯垢や歯石を取っていきます。歯面をきれいにするPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)では、汚れを取るために先端がブラシになっている専用器具などを使ってお口の中を清潔にし、見た目も改善します。
- 子供の歯に有効な予防ケアを教えてください。
- お子さまが飽きずに歯を磨けるよう、興味をもってもらえるようにブラッシング指導します。そのほかには、歯質が弱いお子さまの歯を守るフッ化物の塗布や、虫歯になりやすい奥歯の溝をコーティングして食べカスが溜まらないようにするシーラントなどがあります。
- 子供に私たちの虫歯を移さないようにするにはどうすればよいでしょうか?
- 口移しで食べさせないことはもちろん、スプーンやフォークなどのカトラリーは保護者の方のもので食べさせるのではなく、自分のカトラリーで練習させるようにするのがよいでしょう。お子さまにとっても、自分のカトラリーで食べる方が意識が高まると思われます。
- 乳児はいつごろから歯を磨く練習をすればよいのか教えてください。
- 歯磨きの練習は、歯が生えてくる前から可能です。きれいなガーゼや洗った指で、歯肉を優しくこすることで練習になります。赤ちゃんも口の中に自分の指ではないものが入ることに慣れます。
- しっかり汚れが取れる歯磨きのコツを教えてください。
- 歯ブラシは、汚れがたまりやすい歯と歯肉の間に当てるようにしましょう。軽い力で、同じところを小刻みに20回ほど磨くときれいになります。歯並びによって磨きづらいところも出てくるので、歯科医院でご自身に合った歯磨き指導を受けることをおすすめします。