リテーナー

保定とは

歯並びが変化しないように、固定することです。歯列矯正治療後は保定をしないと後戻りや歯並び、噛み合わせのズレが生じてくることがあります。
リテーナーとよばれるマウスピースを使用して固定する方法と、歯の裏側(舌側)にワイヤーを接着させて固定する裏側のFixワイヤー固定の2通りの方法を、当院では行なっています。

保定の期間は?

当院では矯正治療で歯を動かした後に約3年間、保定期間として3ヵ月に1度もしくは半年に1度歯のクリーニングや検診をしながらメンテナンス、管理しています。歯を動かす動的処置の直後の数ヵ月は歯根の周りの組織が安定していないため、特に後戻りしやすい状態です。

リテーナーにて保定する場合には、食事と歯磨き以外の時間は可能な限り、リテーナーを装着するのが望ましいと考えています。3時間以上リテーナーを外しておくと歯並びが変化を起こしてリテーナーが入りづらい状況になることもあります。リテーナーを外して数時間経ってから装着すると装着感がきつい感覚や歯がリテーナーの形に戻されるような感覚があります。個人差はありますが、少しずつ歯が安定してくると3時間以上外しても動いてくる感覚がなくなってきて、リテーナーを装着しても戻されるような力を感じなくなってきます。
そうしたら外す時間を少しずつ5時間、8時間、日中と増やして、家にいる時と就寝時のみに装着、さらに安定したら就寝時のみとリテーナーの装着時間を徐々に減らしていきます。

裏側のFixワイヤー固定の場合にはご自身での取り外しはありませんので、日常の管理は歯磨きをしっかりして、外れた際には速やかにご予約をとっていただき、再装着します。3年間の保定管理期間後には、保定をやめたい方はリテーナーの使用をやめる、もしくは裏側のFix固定ワイヤーを外しています。
3年間の保定後も、骨が代謝して舌や唇、歯ぎしり、食いしばり、外から歯への外力(吹奏楽などの楽器)、親知らずによって押される力、加齢や歯周病による顎の骨や歯周組織の変化などによる歯並びや噛み合わせの変化が起きる可能性はあります。したがって3年経過後も引き続き保定管理、メンテナンスを継続することも可能です。

保定装置について

1. リテーナー(後戻りを防止するためのマウスピース)による保定

クリアリテーナー

a) クリアリテーナー

厚さ0.75~1.0mmの透明な硬い素材でできたリテーナー(マウスピース)です。透明な素材でできていますので、目立ちにくいです。さらに歯のみを覆うために違和感が少なく、ほかに比べ喋りやすく日常生活でも使用感が良い特徴があります。
歯の型取りをして最短1時間程度で即日に作製することも可能です。(混雑時は難しい場合もありますので、即日希望の場合には可能かどうかをあらかじめご確認ください。)

数ヵ月使用すると歯の噛み合わせる部分も覆うために、歯ぎしりや食いしばりで少しずつ削れて穴が空いてきます。さらに繰り返し着脱する力によって割れてくることもあります。このような状況になった場合には新しいクリアリテーナーに変えるのが望ましいです。
したがってクリアリテーナーは消耗品になります。このように消耗してきたり、紛失することもありますので、当院で矯正治療を行なった患者さまには矯正治療後に予備のリテーナーも作製するようにしています。

  • 【利点】目立たない。違和感が少なく喋りやすい。即日で院内作製可能で安価である。
  • 【欠点】消耗品のため割れたり、穴が空いてきたり、歯の治療で形が変化した場合には再作製の必要がある。紛失の可能性がある。

b) ベッグタイプリテーナー、ホーレータイプリテーナー、クリアボウリテーナー

ベッグタイプリテーナー、ホーレータイプリテーナー、クリアボウリテーナー

ワイヤーとレジン(歯科用の樹脂)によって作られるマウスピースです。歯の周囲にワイヤーが囲み、歯茎の部分に樹脂がうので、クリアリテーナーに比べ大きく違和感があり、発音もしにくく、見た目も目立つ反面、噛み合わせの部分は覆わないためにクリアリテーナーよりも壊れにくく長持ちします。
さらに修理も可能です。ワイヤー部分は少しずつゆるくなることもあるので、メンテナンス時にきつく調整します。審美性を考え、前歯のワイヤーをクリアの材料にしたクリアボウリテーナーのオーダーも可能です。クリアリテーナーのように即日での作製はできません。最低2~3週間以上の作製期間がかかります。

  • 【利点】消耗しにくく、修理も対応できます。
  • 【欠点】目立ちやすく、違和感が大きく喋りにくい。外注にて作製するため作製期間が2~3週間以上かかり、クリアリテーナーに比べ費用が高い。紛失の可能性がある。

2. 裏側(舌側)Fixワイヤー固定による保定

裏側(舌側)Fixワイヤー固定による保定

リテーナーの最大の欠点は管理が面倒ということです。食事の時は外して専用ケースに入れて、食後に歯を磨いて清潔な状態で装着するといったしっかりできないと、うまくいかないこともあります。
たとえば、紛失してしまってその間に歯がずれてしまった。そもそも、リテーナーが面倒もしくは嫌いで初めから使わずにずれてしまった。などなど矯正治療後にリテーナーをサボってしまい再矯正になる方は少なくありません。

そこで初めからリテーナーが自分には合わない、サボる性格だとわかっている場合には、歯の裏側に接着剤で細いワイヤーを接着固定させることで後戻り防止をする方が、慣れてしまえば取り外しや紛失することがありませんので安心かと思います。歯の裏側は唾液の流れがあるので、虫歯のリスクはそれほど高くありませんが、歯石の沈着が多い部分になりますので、メンテナンス時には歯石除去や歯の清掃をしっかり行ないます。裏側のFixワイヤーは奥歯までは通常行ないません。理由は虫歯、歯周病のリスクが奥歯は高いことと噛む力で外れるリスクが高いことなどが挙げられます。
つまり、裏側Fixワイヤー固定は前歯(6~8本程度)のみを固定できますが、奥歯の固定に関してはリテーナーが必要になります。奥歯の歯並びがそれほど矯正前から問題なければ前歯のみの固定で大丈夫でしょうし、裏側Fixワイヤー固定の上にクリアリテーナーを作製することもできますので、心配な場合にはそのように二重構造で保定することも可能です。

  • 【利点】取り外しなどの面倒がないため、慣れてしまえば楽である。リテーナーのつけ忘れや紛失の心配がない。裏側Fixワイヤー固定の上にクリアリテーナーの作製も可能なので、2重で固定すればなお安心感がある。
  • 【欠点】前歯(6~8本程度)のみの固定となり、脱離や清掃性のリスクから通常は奥歯までは固定しない。奥歯までを固定するにはリテーナーの作製が必要。硬いものなどを食べて外れた時に速やかに再装着しないと後戻りの原因となる。歯石がたまるためにメンテナンス時にクリーニングが必要。自身のけ時にはフロスが通りにくい。セラミックの表面に接着しない。